小さな同居もの
このあいだから小さな蜘蛛を部屋でみかける。壁を這っている時もあれば、ベッドの上
(布団の上)をピョンピョン跳ねていることもある。部屋の壁は白いので黒い点にはすぐ気
づく。最初は見つけたら、コップで掬って下敷きで蓋をして、外にポイっと放り出していた
けれど、そうすることもだんだんと面倒くさくなってきてそのままにしている。この前は押
し入れの中をがさごそと探し物をしていると、前方で何やら気配がする。顔を上げると、布
団袋の上を跳ねている家蜘蛛がいた。このまま押し入れの中に住みつき、冬布団を出す頃に
は、蜘蛛の巣を発見することになるのかしらと思いながらもやり過ごした。
夜中に台風が上陸して嵐の夜を過ごした。予想以上に風雨が酷く雨戸を閉めずにいたの
で、窓ガラスに塩の粒粒がこびりつき曇っている。台風一過の朝、ベランダに出て、窓ガラ
スを拭いていると、窓の桟のところに家蜘蛛がいた。気づかずに霧吹きで水を吹きかける
と、驚いたようにとび跳ねた。気にせず霧吹きをして雑巾がけをしていると、手元でピョン
ピョン跳ねながら上手に避けている。まるで、掃除をしているとまとわりついてくる猫みた
いだ。そのうち姿が見えなくなった。
見かけた蜘蛛が同じ蜘蛛なのかどうかはわからない。一匹の家蜘蛛がこの部屋に住みつい
ているのかもしれない。でも、昨日も今日も、姿が見えない。壁にその姿を探している自分
がいた。いなければいないでいいんだけれども、こちらのテリトリに侵入してこなけれ
ば————スキンシップを求めてくるとか、一緒にごはんを食べるとか、一緒にお風呂に入ると
か、一緒に寝るとか————壁や床に飛び跳ねているくらいなら、「いてもいいよ」と思う。
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