笑顔が見たいよ
一人の若い俳優が自死した。特にファンではなかったけど2、3年ほど前から顔つきが精悍になり、体つきも引き締まってきて、ただの美少年から振り幅の大きい俳優になりそうな気配に少しだけキュンとしていた。
彼はあるテレビ番組で女性シンガーと一緒に司会をやっていた。ある回のとき色々なメガネをかけていき、それぞれのキャラクターの表情を作るという場面があった。そこで「ワイルドな〇〇君、やってみて」といきなり振られ咄嗟に「ぶーん」と言ってバイクを走らせるような仕草をし、「えっ!?ぶーんって!…」とつっこみが入り彼は「役者は台本がないとできないんです!」とはにかみながらもちょっと真顔になってエクスキューズしていた。一瞬の表情であったけど、その頬を赤らめちょっとムキになった顔が小学生の男の子みたいでいいなと思ったし、彼のストイックさが表れていた。
彼の死が自分が思う以上に自分に衝撃を与えていることに自分でも驚いている。衝撃というか、彼の死が頭から離れない。くすぶっている。ファンでもなかったあたしがこうなのだからファンの人は、泣き暮らしているのではないだろうか。「なんで?」「何があった?」という言葉しか浮かばない。それだけで彼の死は罪だと思う。人の命は寿命というけれど自死も寿命というのだろうか。
彼の心の裡に抱えていたものがどういうものか分からないけれど、彼には自死はダメだよと強く言うけれど、安らかに眠ってくださいと祈る一方で彼に対する「怒り」も湧いてくるけれど、あたしは彼の死を知ろうとすることはしないことに決めた。メディアは色々なことをあることないこと尾ひれはひれつけて垂れ流すだろう。あたしはそれには目を向けないことにする。目を塞ぎ耳を塞ぐことに決めた。あたしが勝手に持っている彼のピュアなイメージを灰色にしたくないから。彼を守りたいから。そういう思いこそが彼を自死に追い込んだ勝手なイメージなのかもしれないけれど、彼の死を詮索しないことに決めたのでそれさえも考えない。
ただただご冥福をお祈りします。彼の破顔にもう一度出くわしたいよ。
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